残留農薬というと野菜や果物に残っている農薬のことを指すと思っている人もいるでしょう。残留農薬が問題として挙げられることが多いのは生鮮食品の場合でしたが、近年では冷凍食品においても同じような問題が指摘されるようになってきます。
規制も厳しくなってきているので、どのような実態があるのかを詳しく確認しておきましょう。
生鮮食品か冷凍食品かにかかわらず、そもそも残留農薬とは何かをまずは確認しておきましょう。残留農薬とは食品に残っている農薬のことです。農薬は人に対する悪影響が少なく、害虫に対する殺虫効果や植物の病気の予防効果が高いものなど、農作物を育てるのに有用な薬品のことを指します。
人に対する害が少ないとはいえ、長期的に摂取を続けると体内に蓄積してしまい、健康に影響を及ぼすリスクがある場合もないわけではありません。そのため、食品中に残存して良い農薬の量について基準が定められていて、基準値を超えている場合には食品衛生法違反として摘発される仕組みが整えられています。
残留農薬の基準値は厚生労働省、食品安全委員会、農林水産省などによって協議されて定められています。世界的にも残留農薬が問題視されていることから、国際連合食塩農業機関や世界保健機関でも基準値を設けて、世界各国に情報発信をしているのが実態です。
農薬を使えば農作物を育てやすいのは確かですが、食べたことによって健康が害されているのでは問題があります。
特に体内への蓄積が問題になり、何十年も経過してから症状が出るようなケースもあるのではないかと懸念されているため、少しでもリスクが低くなるように安全性を重視した基準値が設けられています。
世界的に食品への残留農薬が問題視されるようになってから、日本でも国を挙げて残留農薬問題への取り組みが行われてきました。基準値をただ設定して食品会社や農業生産者に呼び掛けるだけでなく、検査についても実施するようになっています。
国内で流通している食品に対しては都道府県や市町村などの自治体が収集を行って検査を実施するのが基本になりました。輸入食品についても検疫所を通してモニタリング検査が実施されています。モニタリング検査では輸入された全ての食品を検査しているわけではなく、いくつかのサンプリングをして検査を行っています。
基準値を超えている食品が見つかったときには違反として摘発するだけでなく、検査頻度を高めて違反をより確実に見つけられるようにするのが基本です。このような残留農薬問題への対応は初期には生鮮食品や加工食品に限られていて、冷凍食品については特に対応が実施されていませんでした。
冷凍食品には残留農薬の企画が定められていなかったことや、残留農薬問題が注目された当初はまだ冷凍野菜がそれほど流通していなかったからです。しかし、冷凍食品も広い意味では加工食品の一種なので、加工食品の原材料の基準値に適合することが求められます。
そのため、加工食品の検査基準に基づくモニタリング検査も実施されるようになっています。これと合わせて冷凍野菜だけでなく冷凍加工食品についても同様に検査が行われるようになりました。
特に輸入品では残留農薬が問題になるケースが多いため、厳しい検査が実施されています。
海外で生産・加工された冷凍野菜が国内で広く流通するようになったことを受けて、日本向け冷凍野菜の残留農薬管理に関してガイドラインが設けられました。全ての冷凍野菜を輸入の際にモニタリング検査するのは現実的ではないため、生産の段階での農薬管理を実施するのを求めているのがこのガイドラインの特徴です。
概要としては冷凍野菜を生産する際の農場について選定を徹底することを求め、農薬の使用や収穫、輸送などに関する方針やトレーサビリティ推進の必要性を明記しています。生産者、加工者、輸入者がこのガイドラインを遵守するように心がければ消費者が安心して食べられる冷凍野菜のみを輸入できるという考え方で厳しい内容にまとめられています。
このガイドラインで対象となっているのは輸入されているほとんどの農作物です。厚生労働省告示第499号で定められている残留基準の対象食品の中で、豆類からその他の野菜と定められているものに加え、穀類のトウモロコシのうちで未成熟トウモロコシ、野菜的果実のいちごが該当するものとして挙げられています。
いも類や各種野菜、キノコやイネ科の作物などが該当するので、基本的には冷凍野菜として輸入される可能性がある野菜はこのガイドラインが適用されると考えると良いでしょう。
輸入されている冷凍野菜については厳しいガイドラインが策定され、だんだんと海外産でも安心できる冷凍野菜が流通するようになっています。ただ、国内産の冷凍食品についてはこのような特別なガイドラインが設けられているわけではありません。
食品衛生法などに基づいた生産管理が求められているだけなので、本当に残留農薬の問題がないかどうかは検査結果に基づいた判断するしかありません。残留農薬への意識が高まっている影響で企業でも検査を積極的に実施して安全な食品を提供する傾向が強まっています。
しかし、農作物を逐一検査するのはコスト的にも問題があります。消費者としては国産だから安心と考えず、安全性がどれだけ丁寧に検討されている食品かどうかを見極めるのが重要です。
生産者としては残留農薬問題に適切に対処することで消費者から受け入れられることを十分に認識する必要があります。自主的に検査をして結果を示していれば、消費者から選んでもらえる可能性が高まります。外部委託によって簡単に検査を行えるようになっているので、定期的にサンプリングをして検査に回し、いつも基準値以下になっていることを確認して積極的に情報発信しましょう。
生鮮食品だけでなく加工食品の一種である冷凍食品についても残留農薬の問題があります。加工食品の基準値を超えないものでなければ食品衛生法の違反になることに加え、消費者からも選ばれなくなってしまいます。自主検査を実施して安全な冷凍食品を提供していることを示すのが市場獲得に直結するので、外部委託を活用して積極的に検査を行っていきましょう。