害虫駆除を行う防除と残留農薬の関係

食品44

野菜や果物を畑で栽培する際、雑草や植物等を食い荒らす害虫を駆除するといった防除の方法として、農薬が用いられます。しかし、防除のために農薬を過剰に使い続けてしまうと、栽培している野菜等に農薬の成分が残ってしまうという、残留農薬の問題が発生します。

ここでは、農作物の防除と、それにともなう残留農薬についても合わせて説明します。

残留農薬はどのくらいが安全ラインなのか

害虫等の被害から農作物を守る行為

食品56

野菜や果物といった食用を目的として栽培する農作物は、通常、太陽の光をたくさん浴びて健全に成長させるため、屋外で栽培される点が、大きな特徴です。しかし、野外で栽培する場合、風や雨といった自然災害以外にも、時間をかけて栽培した農作物等を食い荒らす害虫といった、数多くの天敵がいます。

とりわけ、一度害虫に農作物を食い荒らされると、今まで育てていた農作物を処分しなければならないという、経済的ロスが発生するため、農家にとっては大変な損失です。そういった経済的損失を防ぐためには、農作物に害虫を近づけないようにする工夫が必要となります。

いわゆる、防除と呼ばれる行為で、農作物を計画的かつ安全に育てるためには、必要不可欠な行為の一つです。防除を行うには、最初にどのくらいの農作物を育てているのかといった、生息調査を行います。その方法は、農家の聞き取り及び、害虫が侵入したという生活痕の調査との併用で行う点が特徴です。

生息調査から得た生息数等により、被害を防ぐために必要とされる防除の仕方を含めた、今後の計画を練ります。

防除の種類と事後処理

その計画に沿って、実際に防除が行われますが、害虫対策として行う防除には、大きく分けて4種類存在し、いずれか複数を組み合わせて行う点が、大きな特徴です。害虫が生息、侵入できないような環境を作り出し、農作物から守るための防除は、環境的防除と呼ばれます。

具体的には、害虫が好む餌をなくす、防虫網等で侵入経路を防ぐといった方法が採用されます。また、害虫が引っかかりやすい罠を使って捉える方法や、光や音等で農作物から遠ざけるといった、物理的防除も、防除の一つです。

さらに、害虫の天敵と言える生物を利用して、害虫を追い払う生物的防除と呼ばれるものも、広く用いられています。そして、害虫が苦手とする殺虫剤等の薬剤を活用して、害虫対策を行う化学的防除も、効果的な防除の一つです。

防除を行い、害虫がいなくなった後で、農作物に副作用が及ばないための事後処理を行います。さらに、育てている農作物の数を減らさないため、栽培環境の維持を行って、防除を完了させます。

農薬は化学的防除以外でも幅広い役割を果たす

農作物を害虫から守るための行為として、日常的に行われている防除のうち、化学的防除では農薬が広く使われています。化学的防除で使われる農薬には、農作物に付着する菌等のウイルスに加えて、線虫やダニ、ネズミといった動物に対して用いられる、殺虫剤や殺菌剤が該当します。

スズメ等の鳥類及び、ザリガニや雑草等の動物や植物も害虫と呼びますが、こういった動物や植物の駆除にも、農薬が使われます。一方、ハエや蚊といった衛生害虫の駆除や、農作物に直接の被害を与えない不快害虫を退治するための薬剤は、農薬に該当しない点が、大きな特徴です。

農薬の役割は幅広く、害虫や雑草等を駆除する以外に、農作物を健全に育成するためにも使われる等、農業を営む上で必要不可欠な薬剤と言えます。本来、野菜や果物といった農作物は、太陽の光と適量の水さえあれば、農薬を使わなくても育てられるような仕組みとなっています。

しかし、自然界には農作物を好む天敵が多かれ少なかれ生息している他、台風等が多い等、特殊な自然環境に見舞われてしまうと、うまく栽培できないという大きな問題を、農作物は抱えています。そういった天敵がいる環境及び、特殊な自然環境に適応させ、健全に農作物を収穫するためにも、農薬の散布は農業を営む上で、必要不可欠な行為です。

農薬を使う上で避けては通れない残留農薬

害虫駆除及び健全な農作物の成長に欠かせない農薬ですが、栽培や流通過程において、多少なりとも農薬が付着してしまいます。いわゆる残留農薬と呼ばれるものであり、農業を営む上において、避けては通れない問題です。

農薬自体の基準は、農薬取締法によって細かく定められていますが、農薬取締法とは別に、厚生労働省によって定められている食品衛生法が、大きく関係してきます。作物を栽培する過程で使われる農薬に関して、農作物に付着した量が一定基準以下になるよう、食品衛生法で定められています。

残留農薬の基準は、農作物の種類によっても多少変動しますが、一律基準として、0.01ppmという数値が一つの目安です。国の検査基準に基づき、一律基準以上の数値が検出された農作物は、原則として出荷が禁止されます。

健全な農作物の成長に欠かせないからと言って、農薬を必要以上に使うと、結果として、大きな経済的損失へと繋がります。

残留農薬が付着していても食品の質は維持されている

食品47

美味しい農作物を確実に作るために欠かせない農薬には、人間にとって有害となる物質も含まれているケースがあります。そういった理由から、無農薬で栽培された農作物を選ぶ人も中にはいますが、市場に流通している農薬は、化学的防除の対象となる害虫のみに効果をもたらすものが、多数を占めます。

実際に農薬を使う際、数10グラムといった少ない量で効果をもたらす高活性に加えて、人体に健康的な被害を起こしにくい低毒性といった点が、重視されています。さらに、環境に配慮しながらも使いやすい点、何よりも、農作物や土壌等で分解されやすい物質を含む等、効率性を重視した農薬が選ばれる傾向にあります。

かつて一部の農薬は、強い毒性があったために劇薬に指定されていましたが、研究開発により、その毒性自体が大きく低下している点も特徴です。従って、農作物栽培に使われる農薬自体が劇薬に指定されなくなったと同時に、散布する量も減っているため、食品としての安全性を高い水準で維持できるようになっています。

安全な農作物を作るために欠かせない農薬

外敵となる害虫から農作物を守る化学的防除や、農作物を効率良く育てるために使う等、農薬は農業を営む上で欠かせなくなっています。現在流通している農薬は、少ない散布量かつ、ターゲットとする害虫のみに効果をもたらすように進化している点も特徴です。

さらに、食品衛生法で定められた基準以上の残留農薬が、検出された農作物は出荷できないため安心して食べられます。