残留農薬になることもあるプロシミドン

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農作物の栽培のために使用されている農薬は、どれも残留農薬となる可能性があります。農薬が残留していても基準値を超えていなければ安全に食べることができますが、基準値は農薬の種類によっても異なります。農薬として使用されることが多いプロシミドンも独自の基準値がありますが、ここではこの物質に関する残留農薬の情報などについて、詳しく紹介します。

残留農薬はどのくらいが安全ラインなのか

殺菌剤として使用されるプロシミドン

プロシミドンは殺菌の目的で主に使用されている農薬です。ジカルボキシイミド系の殺菌剤で、幅広い種類の農作物に使用できます。農作物の中には、特定の病原菌に対して抵抗力が弱いものがありますが、プロシミドンなどの殺菌剤を使用することにより、農作物を病原菌から保護することが可能です。

プロシミドンは特に、スクレロチニア属菌やボトリチス属菌に対して高い殺菌力を持っているために、こうした病原菌に影響を受けやすい植物の栽培に使用されています。プロシミドンがスクレロチニア属菌などの活動を低減できるのは、菌糸の成長を殺菌により抑制できるからです。

日本国内でも果実から野菜まで、さまざまな植物を健康に育てるために使用されています。プロシミドンが農作物に使用される時期は、使用する植物の種類によっても違っていて、どの時期に使用されたかによっても、農作物に残る農薬の量が変化することがあります。

収穫の時期から近い時期に使用した方が農薬も残りやすくなりますが、使用する量によっても残存農薬の量は違ってきます。

リンゴの栽培にも使用されるプロシミドン

プロシミドンが農薬として使われることがある果実の一つがリンゴです。リンゴはモーリア病という病気になりやすいために、病菌の原因となる菌を殺菌する目的で使われています。リンゴに使用されることが多いのは50.0パーセントプロシミドン水和剤で、リンゴに使用する場合には1000倍程度の濃度に希釈されます。

リンゴに直接散布することで、表面についた菌の殺菌をおこないますが、一つのリンゴに使用できる50.0パーセントプロシミドン水和剤の使用回数は4回が限度です。

この農薬だけでなく、プロシミドンを含んでいるほかの種類の農薬を含めて、4回より多く使うことができない決まりです。上記の限度を超えてプロシミドンを含む農薬を使用してしまうと、リンゴの成長に悪い影響が出るだけでなく、収穫されたリンゴにも基準値を超える量のプロシミドンが検出される場合もあります。

決められた回数と量を守って使用すれば、基準値を超える可能性も少なくなるので、安全に使用できます。リンゴの栽培にプロシミドンを使用する場合には、使用する時期も守る必要があり、50.0パーセントプロシミドン水和剤を使う場合には、収穫の時期から90日前までに散布する必要があります。

上記の時期より後に散布をすると残留農薬が基準値を超える場合があるので、注意が必要です。

ミカンの栽培にも使用されるプロシミドン

プロシミドンはミカンの栽培にも使用されることがある農薬です。ミカンの場合には、灰色かび病という病原菌を防ぐために使用されています。ミカンに50.0パーセントプロシミドン水和剤を使用する場合には、リンゴに使用するよりも希釈する倍数が高くなります。

ミカンには1500倍から3000倍に希釈したものを使用する決まりになっていて、希釈の倍数が高いぶんだけ、通常の方法で使用すれば農薬も残りにくくなっています。ミカンに50.0パーセントプロシミドン水和剤を使用する場合には、使用できる回数もリンゴより少なくなっています。

1つのミカンにつき合計で3回まで使用することができ、3回以内に使用をおさえることで、残留農薬を基準値以下にしやすくなります。ミカンの場合も、プロシミドンを使用したほかの農薬を含めて使用回数を計算する必要があり、合計で使用できるのは3回までです。

残留農薬を基準値以下にするためには散布する時期も守る必要があり、ミカンの場合には花が咲く頃が散布できる時期です。ただし収穫する日の30日前までに限られています。

灰星病の予防にも使用されるプロシミドン

プロシミドンは灰星病の予防のためにも使用されることがあります。灰星病は花を変色させたり、灰色の粉が植物の表面に付着する病気です。灰星病にかかりやすい植物としてはモモやスモモ、オウトウなどがあり、これらの植物を灰星病の被害から防ぐために、殺菌剤としてプロシミドンが使われています。

50.0パーセントプロシミドン水和剤を使用する場合、植物の種類によって希釈する倍率が違っていて、モモやオウトウに使用する場合には1000倍から1500倍程度の濃さに希釈して散布します。

スモモに散布する場合には1000倍から2000倍程度に希釈して散布できます。

アンズの殺菌にも使用できますが、アンズの場合には希釈倍数は1500倍と決められています。使用できる時期も果物の種類によって違いがあり、モモの場合には収穫する日の3日前まで使用できます。スモモやオウトウ・アンズは収穫の14日前までに散布を終える必要があり、スモモやオウトウの方が農薬が残りやすくなっているので、収穫日よりも早めの時期に農薬の使用ができなくなります。

マンゴーの栽培にも使用されるプロシミドン

プロシミドンはマンゴーの栽培にも、消毒用として使われている農薬です。マンゴーの場合には、軸腐病という病原菌を予防するためにプロシミドンが使われますが、軸腐病はマンゴーを収穫したあとに、症状が現れることが多い病気です。

そのために、収穫前に適切な方法で殺菌をすることが、症状の発症を予防するために効果的ですが、50.0パーセントプロシミドン水和剤を散布する場合には、1000倍に希釈してからおこないます。

マンゴーにプロミシミドンを散布する回数は3回が上限になっていて、それ以上プロシミドンを散布すると、軸腐病の発生は防げても、残留農薬が基準値を上回り販売できなくなることがあります。マンゴーは農薬が残留しやすい果物であるために、プロシミドンを散布できる期限もほかの果物と比べて短くなっています。

収穫日の21日前までに散布を終了する必要があり、早めに消毒を終えることで収穫後のマンゴーに農薬が残留しにくくなります。

正しく使うことで残留農薬を減らせるプロシミドン

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プロシミドンは、日本でも広く使用されている農薬ですが、幅広い種類の病原菌を殺菌できるため、野菜から果実まで多くの植物の病気を予防できます。プロシミドンを安全に使用するためには正しい使用方法を守って使うことが大切で、使用回数もそれぞれの植物ごとに守る必要があります。

プロシミドンを使用している農家では使用時期なども厳守して、安全に食べることができる農作物を生産しています。