食品を製造している企業では、自社の製品の安全性を確保するために、原材料の検査もしっかりとおこなっています。原材料を検査するうえで特に重要になるのが残留農薬の量で、基準値以下である安全なものだけが選ばれて、使用されています。
かつて、グラノーラに含まれていた残留農薬が検査により判明した出来事がありましたが、ここでは、こうした事件の詳細や食品の安全性について、詳しく紹介します。
残留農薬の検査は、食品の安全性を確保するために、さまざまな場面で役立てられています。2010年代の後半にも、残留農薬の検査によって、製造に使用する材料に、基準値を超える農薬が残っていたことが明らかになる出来事がありました。
原料に残留農薬が残っていたことを公表したのは穀物を原材料にして食品を製造している会社で、この会社で使用していた大麦に基準値を超える農薬が含まれていたために、会社では自主的に回収を決めました。回収が決定されたのはこの会社で販売していたグラノーラで、グラノーラとは穀物を使用して作られるシリアルの一種です。
麦やとうもろこしなどが材料によく使用されますが、お米が材料に使われることもあります。
穀物と一緒にグラノーラの材料に使用されることが多いのがナッツ類で、こうした食品も残留農薬の検査の対象になります。製品の回収を決定した企業では大麦を材料に使用していましたが、回収を早期に決定したことで、消費者が危険性のある食べ物を口にすることを避けることができました。
グラノーラは大麦などの穀物やナッツにハチミツを混ぜ合わせて、しっかりとした歯ごたえがでるまで焼き上げた食品です。独特の触感があることから海外では人気があり、日本でも人気が出始めていました。そのために多くの企業も、自社でグラノーラの製造販売を開始したのですが、そうしたときに起こったのが今回の出来事です。
しっかりと原材料に使用していた大麦の残留農薬を検査していたからこそ、基準値を超える農薬が残留していたことが明らかになったため、残留農薬を検査することの重要性が改めて確認されました。こうした残留農薬の影響による製品の回収は、企業にとっても非常に負担が大きい行為です。
該当する大麦を使用して製造された製品を全て回収しなければいけないために、運送費用だけでも非常に多くの予算が必要です。製造のために使用した費用も製品の販売によって回収できなくなるため、企業にとっては非常に大きな損失です。
ですが、消費者が安全に食べることができる食べ物を販売し、企業の信頼を守るためにはこうした損失も避けられないものになっています。
グラノーラの自主回収を決めた企業では、自社で販売している2種類のグラノーラの回収をおこないました。一つは果実が原材料に使用されているもので、もう一つは大豆が使われているタイプのグラノーラです。どちらも、基準値を超える農薬が残る大麦を材料として使っていたことから、2種類同時に回収されることになりました。
この企業では特定の日時に製造されたグラノーラのみを回収の対象にしましたが、これはこの期間に製造されたグラノーラにだけ、問題となった大麦が使用されていたからです。回収の対象となるグラノーラかどうかは、それぞれの製品の賞味期限によって判別されました。
賞味期限によって製造した日時が特定できるために、問題の大麦を使用した製品もわかるようになっています。
この企業が回収を決定したのは2018年の4月ですが、賞味期限が7月から10月になっていたものの一部が回収の対象になりました。賞味期限は商品のパッケージの裏側に記載されているために、この商品を購入した消費者が簡単に確認できるようになっています。
グラノーラの回収を決定した企業では、さまざまな方法で自社の製品回収を実施しました。店頭や倉庫に置かれていた、販売される前のグラノーラを回収しただけでなく、すでに消費者に購入されたグラノーラも回収の対象になりました。
この企業では、対象となっているグラノーラに基準値を超える残留農薬を含む大麦が使用されていた事実を、ネットなどを利用して多くの人に知らせ、消費者が間違って食べてしまわないように注意をうながしました。対象となっている賞味期限の記載されたグラノーラを購入した消費者に対しては、料金先払いの方法で購入した製品を送付してもらうことを申し出ました。
この企業では配送費を負担するだけでなく、製品を返品してくれた顧客に対し、ほかの商品と交換できる商品カードの配布も無料でおこないました。カードを使用して交換できるのは、回収されたグラノーラの価格に相当する商品で、こうした経済的負担を負うことを企業が決断したことも、安全に食べることができる食品を販売している企業としての信頼を守るためです。
グラノーラの回収を決めた企業では、今後同じようなことが起こらないように、原料に含まれる残留農薬が基準値を超えていないかどうか、さらに管理の体制を強化する方針を発表しました。グラノーラに残っていた農薬の量は基準値を超えていたのですが、消費者が誤って食べてしまっても健康に影響が出る可能性が極めて低い量でした。
それでもこの企業がグラノーラの回収を決めたことは、消費者の食の安全を守るために万全を期したいという企業としての責任があったからです。
こうした出来事が発生した影響は、グラノーラを回収した企業だけではなくて、ほかの会社にも現れています。同じようなグラノーラを販売している企業でも、製品に使用されている原材料の残留農薬をそれまで以上に厳しく検査するようになり、ほかの種類の食品を製造している企業でも、残留農薬に対する管理体制が強化されました。
多くの企業が残留農薬に対する検査を厳格におこなうことは、製品を購入する消費者にとっても多くのメリットがあり、安全に食べることができる食品をさらに購入しやすくなりました。
グラノーラを販売していた企業が、自社の商品を回収するきっかけになったのは、残留農薬の検査でした。検査をしっかりとおこなっていたからこそ、基準値を超える農薬が残留していたことが明らかになったため、適切な対策をとることができました。
食品を製造する企業にとっては、全く無関係の出来事ではないために、安全に食品を製造したい企業では積極的に、専門の会社に依頼して調査をおこなっています。